cling
ありふれた、秘密を交わすお話。
ラピスラズリ・リリィ 04
「後半の話に、嘘はほとんどないんだよ。"男バスに好きな人がいて"、"好きな人のために頑張るには"、"へっちゃら"だった。"女らしく生きようと決めた"のは、彼女に向いた悪意をこちらへ向けさせるためだったけど」
赤司は黙っていた。私は、話をやめなかった。
「さつきは、バスケよりも、自分よりも、大切なものなんだ」
バスケも、今の自分も、さつき無しでは生まれなかった。私の世界はさつきによって成り立っていた。さつきは、私の全てだった。
「は、どうして、オレに話してくれたんだ」
「征十郎が知りたがったくせに!」
私はおもわず笑い飛ばしてしまった。
「オレはこれを他人にしゃべるつもりはないが」
「うん、それが分かってるから、喋ったんだよ。この件を広めたところで、男バスの悪い噂にもなっちゃうしね。だから征十郎は喋らないって、確信していた。あと、緑間くらいしか友達いないしね」
「……」
「嘘、嘘だよ。実際そこまで考えてなかったよ。ちょっと、さっきくだらない、とか言われた腹いせに、いじめたくなっただけ」
「、君はオレを怒らせた……」
赤司は少し拗ねてしまったようだ。部室のベンチの上で体育座りをして、そっぽを向いてしまった。いや、だから、知らなかったとは言え、先に私を怒らせたのはお前の方なのに。理不尽だなーと思いながら、私は謝る。
「ごめん、征十郎。許してくれ」
「……仕方ない」
彼はお怒りの三角座りを解除し、私に向き直ってくれた。
「まあ、秘密のお話はこんなものだよ。開けてみればたいしたことないだろ?」
「割と大したことだったと思うのだが」
「細かいこと気にすんなって」
その時、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
「もうこんな時間か」
「戻ろう、征十郎」
荷物を持って、私は腰をあげる。
「」
征十郎が私を呼び止める。
「なんだよ、征十郎」
「オレは、これからも君のサポートをするよ、今までどおり」
それはきっと、彼なりの精一杯のフォローだったのだろう。私の"異常性"を知った上で、それでも普通に接してくれるという信号だった。
「それじゃあ、よろしく」
私はその言葉に甘えることにした。
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13.12.18 明那