cling

 とても心地良いあたしの居場所、見つけました。

幸せ日和

「楽しかったね、お姉ちゃん!」
「ああ、あたしも楽しかったよ」
「また遊ぼうね!」
「こら、に迷惑だろう……」
 申し訳無さそうに言う無涯さんがとても兄貴らしかった。その光景が微笑ましくて、ついつい頬が緩んでしまう。
「いいですよ無涯さん、あたしどうせ帰宅部ですし。皆、また遊ぼうな」
「「わーい!!!」」
「すまないな……
「別に良いッスよ、気にしないでください。あたしが暇だって事はよく知ってるでしょう!」
「……っ!」
 バシッと、申し訳無さそうにしている無涯さんの背中を軽く叩く。が、少し強すぎたようだ。無涯さんは少し表情を歪めて背中を押さえた。
「あ、すんません!」
「いや、いい……"いつも"のことだろう」
 あ、何か今ちょーと傷ついたよ、無涯さん。でも本当のことだから言い返せない。ジーザス!
「ねぇ、お姉ちゃん」
 一人心の中でブツブツ呟いていると、そばに居た無涯さんの妹(ちなみに先程励まされた子でもある)があたしの服を少し引っ張って呼んだ。
「ん、何かな?」
「お姉ちゃんってね……お兄ちゃんのかのじょなの?」
「「?!」」
 無涯さんの妹の爆弾発言によって声も出さずに驚くあたしと無涯さん。更には否定の言葉を紡ぐタイミングまでもを失ってしまい、気まずい空気が流れる。
 そんな空気の中、ふと無涯さんと目が合う。すると無涯さんはすぐに視線を逸らし、口を開いた。
「ち、違う……!こいつはただの友達?だ。そもそも友達だったのか?」
「ちょっとちょっとちょっと!!!その疑問系酷くありませんか?!」
「あ、すまん」
「あのね、お姉ちゃんは無涯お兄さんのただの友達で彼女ではないんだよ」
「えーっ」
「えーって……どうして?」
「だって……お姉ちゃんが無涯お兄ちゃんの彼女だったら、またいつでも遊んでくれるでしょ?」
 あたしは、その純粋な一言に、感動しました。
「無涯さん」
「ん?どうかしたか?」
「彼女にしてください」
「……さっき"ただの友達"だと言ったのは誰だ」
「どっかの馬鹿ッスよ!」
「じゃあお前は馬鹿だな」
「何を今更っ!」
「開き直るな!!!……で、どうしていきなり彼女になりたいと言い出したんだ?」
「だってだってだって、こんな純粋で可愛い妹と弟が欲しいんですもん!!彼女というより、むしろ結婚してくださゴフッ」
 とても真剣なセリフの最中に無涯さんに殴られた。痛いです、マジで。ちょっと無涯さん、今のマジだったでしょう。まあ、ふざけすぎたあたしも悪かったんですけど……と、心の中で一人ブツブツ言っていると、頭に優しく手が置かれた。無涯さんの手だった。
「そんな、特別な関係でなくても……いつでも遊んでくれて構わない。むしろ遊んでやってくれ。その方が俺も嬉しいし、こいつらも喜ぶ」
「……はい!喜んで遊ばせて頂くッス!」
「そうか」
 無涯さんが、笑った。優しく、温かく。それは決してやろうと思って出来る表情じゃない。自然に出てきた表情。綺麗だなと思った。
 しかし、それは次の瞬間に凍りつき、崩れてしまった。
「じゃあお姉ちゃん、今日家に泊まりに来てよ!」
「「…………」」
 悪意がない分、子供って残酷だなと感じました。


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07.03.28 坂田明那
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