今回は本気です
今年の誕生日こそは バネさんにアタックします
明日はきっと
明るい日
今日はめでたいバネさんの誕生日。
あたしがまだ誕生日プレゼントを買えてないのに来てしまった、バネさんの誕生日。
忘れてたんじゃないよ!!
そんなもん二ヶ月前からドキドキしてたんだからさ!!
じゃぁなんでプレゼントが買えてないかって?
・・・・・・。
ごめんなさい、前日まで手作りのものに挑戦してたあたしが馬鹿でした。
数日前に練習した時は上手くいったのに、前日にケーキ焼いたら見事に真っ黒こげ。
ちなみに、その真っ黒焦げのケーキを無理矢理サエさんに食わせたら「まずい」の一言で切り捨てられた。
さすが技術家庭の成績1に限りなく近い2のあたし!・・・・・・って、ふざけてる暇もない。
で、昨日は潔く諦めて寝てしまいました。
そして今更、物凄く後悔しまくってます。
「どうしようサエさんっっ!!」
「どうしようもないよ、」
お家が隣なので登校は嫌でも一緒になるサエさんにぼやいてみる。
だが、またもやあっさりと切り捨てられた。
「じゃぁそこら辺のコンビニで少し高そうに見えるお菓子でも買ったらどう?」
「サエさん・・・この乙女のあたしに、好きな人の誕生日プレゼントをコンビニの袋に入れて渡せと言うの?!」
「は乙女じゃないけどね。大丈夫、愛が篭っていれば何をもらったって嬉しいって」
「いやいや、コンビニの袋に愛を込められて渡されてもあたしは嬉しくないから」
「だから愛を込めるのはお菓子の方。なんでコンビニの袋にこだわるわけ?」
「良いじゃん、コンビニの袋はいろいろと便利なんだからさ!!」
「てか論点ずれてない?」
「・・・・・・。」
ああ、どうしてだろうか?
サエさんと喋ってるといつの間にか論点がずれるのは。
というか凄いね。バネさんの誕生日プレゼントからコンビニの袋の話にするなんて・・・あたしって天才的?
とか言ってる間に学校に着いてしまいました。
やばい、本気でどうしよう。
とりあえず、地面にへたり込んでると通行の邪魔になると言う事で、
あたしはサエさんに引きずられながらも校内へと入っていく。
あたしは乙女なんだからせめてお姫様抱っこが良かったな☆とか冗談半分で言ってみたら殴られた。
だからクールな顔のまま殴るのはいい加減に止めてよ、サエさん。
+++++
「バネさん、誕生日おめでとうっ☆」
「鳥肌立つからその乙女口調はやめろ・・・」
好きな人にまでこう言われるあたしってかわいそう。
自分でかわいそうとか思って余計に虚しいけどさ。
「では気を取り直して・・・・・・誕生日おめでとう、バネさん」
「ありがとな」
いつもと同じ笑顔で返してくれるから、思わずときめいてしまう。
こういう所だけは乙女なんだと、胸を張って言えるかもしれない、あたし。
と、いつもの調子で自分で自分にツッコミやってると、
突然、バネさんがあたしに向かって手を差し出してきた。
「・・・何、この手?“Shall we dance?”って言いたいわけ?」
「んなわけあるか」
「じゃぁ・・・何?」
「プレゼント、用意してくれてるんだろ?サエが教えてくれたぜ」
あの野郎。
無駄な事ばっかり言いやがって・・・っ。
「えーっと、あー、そのー・・・・・・」
無い、とは言えない。
彼の瞳が物凄くキラキラ輝いてるように見えたから。
良い言い訳が見つかるわけも無く、何も言わない時間が過ぎて行った。
その時、タイミングよくチャイムが鳴った。
「あ、もう先生来るし・・・また、後で・・・ね」
「楽しみにしてるからな!」
笑顔で言うバネさんの言葉に、良心と恋心がチクチクと痛んだ。
席に着くと朝の短いHRが始まるが、先生の声は全く耳に入らなかった。
考えるのは、バネさんの事だけ。
+++++
時間というものは早く過ぎて欲しいと思うほど、遅く感じるもので、
ゆっくり来て欲しいと思うほど、早く来てしまうものだ。
良い言い訳も、簡単なプレゼントも用意できずに時間は過ぎて行った。
そして、あっという間に放課後。
一瞬逃げようかと思ったんだけど、そんな考えも儚く散る。
「・・・・・・逃げないわよ・・・」
「いやぁ、一応捕まえとこうかなーっと思ってさ」
「逃げない保証もないし」
授業も全て終わり、HRも終わってすぐ。
両腕をサエさんと亮に掴まれて捕獲されました。
なんだかんだ言ってもこいつらはテニス部な訳で、あたしの力で敵うわけが無く、おとなしくする事を余儀なくされた。
「あ、・・・って、お前ら何してんだ?」
「「猛獣捕獲大作戦ごっこ☆」」
「も、猛獣ってなによ?!せめて小動物とかにしなさいよ!!あとその☆キモイっ!」
「てか、大作戦っていらねぇよな。もう捕まえてるし」
さすがバネさん、ナイスツッコミ!・・・じゃなくてっ!!
「あのさ、がバネさんと二人っきりで海に行きたいって、さっきからうるさいんだよ」
「はぁ?!あたしそんな事いっひぇはいっ!」
サエさんの言葉に否定しようとするが、途中で亮に頬を両側から引っ張られて上手く言葉にならなかった。
てかお前ら、何企んでるんだよ?!二人っきりって所強調すんなっ!!
「?別にいいけど・・・何暴れてんだ、?」
「ひょうがひっはうかはっ!」
「・・・何言ってんのかわかんねぇよ」
「何でもないって、言ってるんじゃない?」
「いっひぇはいっへは!!」
「じゃぁバネ、あとはよろしく」
亮に背中を押され、あたしはバネさんの胸にダイブ。
・・・・・・。
どうしよう、心臓が爆発しそう。
「あ、あの、さー!海行こう、海っ!!」
体勢を立て直して、あたしは赤くなる顔を無視して勢いだけでその言葉を口にした。
その言葉にハッとする。
振り返ればサエさんと亮がニコニコとクールに微笑んでいる。
は、はめられた・・・・・・っ。
「あ、ああ」
バネさんが肯定の返事を出した時点で、海に行かないわけにはいかなかった。
あたしがバネさんの言った事を曲げられないって分かっているのか、さらにサエさんと亮はニコニコニコと微笑んでいた。
後でぶっ飛ばしてやると、心の中で思いながら、あたしはバネさんと海へ向かった。
その間、どちらも口を開く事はなくて気まずい空気がずっと漂っていた。
あたしは顔が赤いのを見られたくなくて、バネさんの一歩前を歩く。
バネさんはそのあたしの一歩後ろからついてくる。
あたしとバネさんの、距離は一定。
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