私達の日常










「仁ー」
「……今日は何だ?」
「腹減った」
「んな事オレに言うな」


今日の放課後も、いつものように仁のかばんを枕にしてねている。
ちなみに、仁は思いっきりかばんの紐を引っ張って逃れようとしていたが、
私がなかなか離れないのでもうとっくに諦めて座り込んでいる。


「腹減った……」
「……」
「腹減った」
「……」
「腹減っ「同じ事何度も言うんじゃねぇよ」


ネチネチとしつこくぼやいていたら、案の定仁が突っ込んでくれた。
その突込みだけを待っていたって事は仁には言わない。
というか言えない。余計に怒られそうだし。




「亜久津ー、ちゃーん!」


少し離れた場所からハイテンションな声が聞こえてきた。
振り向くと、予想通り千石がこちらに向かってブンブンと手を振っていた。

あと予想はしてなかったけど、千石の隣に檀くんもいた。
相変わらずどこかのコマーシャルで出ている犬のような瞳でこちらを見ている。
会うたびに思わず「可愛いっ!」と語尾にハートマークをつける勢いで叫びだしそうだ。


「やぁ!いつも可愛いね、檀君!!」


前言撤回、理性が抑えきれず叫びだしてしまった。
そのまま勢いで可愛い檀君に抱きついた。
ちなみに声をかけてきた千石は無視だ。どうでもいい。


「せ、先輩……放してくださいです……」


苦しそうに腕の中で抵抗する彼もまた良い。良過ぎる。
お姉さん、もう我慢できそうにないかもしれない。


、犯罪になる前にやめとけ」
「あうっ」

頭に衝撃が走る。仁が檀君を抱きしめる私の頭に彼の鞄をぶつけたようだ。
意外と痛くて、私は思わず檀君を放してしまった。名残惜しいけど仕方ない。
涙目な檀君に免じて諦めるとしよう。


ちゃん、俺も抱「千石は可愛くないから却下」

コンマ一秒で千石の要求は丁重にお断りさせて頂きました。


「なんでさー!!檀君ばっかりずるいよ!!」
「駄々をこねても可愛くないから却下!!」
「じゃあなんで亜久津は許容範囲なんだよ!!」
「仁は意外と可愛いんだよ!!」
「………………へっ?」
「ん?」

千石が意外だと言うように首を傾げる。
仁も私の言葉を聞いて首を傾げた。


「ねえ、ちゃん。もう一度言ってくれる?」
「仁は可愛い」
「……痛いっ!亜久津!何で俺を殴るのさっ!!」
「うるせぇ!」

きっぱりと言ってやったら千石は仁に鞄で殴られた。
抗議をしたからさらに乱闘状態にまで発展した。


「ねえ、檀君。仁は可愛いよね」
「はいです!亜久津先輩はカッコいいですけど、可愛い所もありますです!!」
「ねー」
「ねえ、何で何で!亜久津のどこが可愛いの!!」
「黙れ千石」
「ふがっ!」

悪くない千石が鞄で殴打されてるのもそろそろ可哀想になってきたなあと思いつつも、
照れ隠しをしてる仁が可愛いからもう少し見てたいなあという気持ちもあって躊躇ってしまう。

でもいい加減千石が涙目なので止めに行くとしようか。


「じゃあ檀君、仁に抱きつきに行こうか!」
「はいです!」
「仁ー!」
「亜久津先輩ー!」

「「ダイブ!!」」

声をそろえて檀君と一緒に仁に抱きついた。


「っ……!お前ら……!」

ほんの少し顔を赤らめた表情が見えた。
可愛いなあと思ったのもつかの間。
檀君と私はすぐに引っぺがされてしまった。


「やっぱり可愛いー」
「可愛いですー」
「黙れっ」
「あうっ」

仁をからかってたら私だけが鞄を投げつけられた。
顔面に当たったけど、そんなに痛くなかったから手加減して投げてくれたんだろう。
優しいなあ、仁は。

そんなこと口にしたらもっと怒られそうなので、今日のところはやめとこう。
これ以上拗ねられたらこの後遊びに行けないし。


「よし!じゃあ今日はカラオケ行こう!」
「千石のおごりな」
「千石先輩、ありがとうございますです!」
「ちょっ!!何で殴られた挙句おごらなきゃいけないの?!」
「今日はアンラッキーな日だからだよ!」
ちゃん!勝手に決め付けないで!」


そんなこんなで今日も楽しいです!千石はなんだか毎日かわいそうですが!





09.07.20


後書き
勢いに任せて書いた産物。扱い悪くてごめんなさい、千石。

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