もしも世界が明日で終わりなら、あなたは何をしますか?
If...
「もしも世界が明日で終わるとしたら、滝は何をする?」
隣の滝にそんな言葉を投げかけると、彼は呆れた顔をして私の方に向いた。
「また唐突に物凄い質問するよなー・・・」
「本読んでたら思いついただけ。いいから答えてみてよ」
深いため息を吐く滝を無視し、私は読んでいた本を閉じてそう続けた。
「んー・・・いきなりそんな事言われてもね。やりたい事がたくさんありすぎてまとまらないんだよ。
んで、そういうは何をするの?」
憎たらしい笑顔を浮かべ、滝は再び私の方へ顔を向けた。
「もちろん、質問するからには自分で答えられるよね?」
本当、こいつは嫌な奴だな。
そんな意味を込めてため息を吐く。
しかし、このまま黙っていられるわけもなく、私はあらかじめ用意しておいた答えを口にした。
「私は、普段通りに過ごしたい」
「・・・はっ?」
滝は私の答えを聞いて間の抜けた声を出す。
しかし私は気にせずに言葉を続けた。
「この質問をして、好きな人に告白するって答えが結構あると思うんだけどね、それって無意味だと思うんだよね。想いを伝えて両想いでも片想いでも、結局一日後には相手の事すら分からなくなっちゃうんだし。あと、贅沢したいって答えも無意味じゃん。いくら金を使いたくても一日後には金なんてあっても無駄なだけだし、儲けようと思う人が居ないでしょ?
何したって無駄なんだから、普段通りに過ごす方が良いに決まってるよ」
いつもと変わらない声のトーンで言い切ると、滝はまた呆れた顔をした。
「うわぁ、凄い現実的な考え。俺に答えさせてどうするつもりだった?」
「滝の答えを聞いて否定しまくるつもりだった」
先程より明るい声で答えると、今度は滝が深いため息を吐いた。
そのため息は"本当、こいつは嫌な奴だな"という意味が込められている気がして、少し笑えた。
「で、結局滝の答えは?」
睨むように滝を見ると、彼は私に微笑みながら答えた。
「と一緒に普段通りに過ごして、無意味な事をしている人達を話のネタにでもするよ」
「うわー、腹黒っ」
「に言われたくなーい」
笑い合い、ふざけ合い、他愛もない話をする。
もしも本当に世界が明日で終わってしまうのなら、私は普段通りに過ごしたい。
普段どおり、こうやって滝と過ごしたい。
最期が幸せであれば、私は世界が明日で終わったって構わない。
むしろ明日で世界で終わってくれた方がいい。
そうなれば、私は幸せな日常と一緒に終わることが出来るのに。
そう思ってしまうことは、世界に対して失礼だろうか。
05.11.03.